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ペンギン

ジェンツー繁殖ロン文(LONG文)

2010.06.17 - ペンギン

フンボの産卵、孵化で大喜びのペンギンチーム。んがしかし、その余韻に浸っているまもなくのジェンツー産卵。うれしい反面、プチパニックだったり…。気分的には、「走り幅跳び」に出場して、なかなか良い踏み切りをして、これは良い記録になりそう!と思った瞬間、実は「三段跳び」だった、みたいな。着地じゃなくて、ホップの次のステップかよ!みたいな。じゃ、ステップの次のジャンプも残ってるの?え?まさかのオウサマ?みたいな。

とにかく、おめでた続きでうれしいのですが、おめでた続きにも問題はあるもので…。

というのも、フンボの初産卵の時は、このブログに公開するやいなや、すぐに新聞やテレビのマスコミ各社さんからの問い合わせが殺到したわけです。

でも今回、スタッフの「ジェンツー産卵!こりゃ一大事だ!!」という大盛り上がりに反して、現在問い合わせ「0ゼロ」(汗)

まぁ一般的には、フンボだろうが、ジェンツーだろうが「ペンギンひとくくり」的に扱われるので、「また卵産んだんだ」と、もう普通な出来事として思われるのかもしれません。

いやしかし!ジェンツーの産卵というのは実は大変貴重なんですよ、というお話を今日はしたいと思います←前置きが長すぎです。

 

まず飼育数について(2008年のデータ)。

フンボルトペンギンは、実に77もの動物園や水族館で飼育されており、その総数は1675羽。

一方のジェンツーペンギン。飼育している園館は19。総数も296羽。

こんなに飼育数が違うんですね。その理由は何か?その大きな理由の1つに挙げられるのが、生息地に関係します。フンボルトは温帯性のペンギンなので、日本でも通年屋外飼育が可能な種なのです。そのため飼育園館も多いんですね。それに対して、ジェンツーは亜南極に生息しているペンギンです。つまり飼育環境を管理する(空気や水温を下げる)必要があります。少なくとも日本では夏場の屋外飼育はできないので、飼育園館も少ない大きな要因となっています。

ちなみに、もっと細かいことを言いますと、ジェンツーペンギンは2つの亜種に別けられています。キタジェンツーペンギンとミナミジェンツーペンギンと言います。アクアスで飼育しているのは、ミナミジェンツー。その飼育数はというと

キタジェンツーペンギン  11園館 152羽

ミナミジェンツーペンギン 6園館 94羽

(亜種不明ジェンツー  3園館 50羽)

 

さてここまでは数の話でした。実はジェンツーに会おうと思っても、意外とその機会は少ない生き物なんですね。もちろん、私たち飼育員というのは、「数が少ないから貴重」という考えはありません。これはあくまで国内の飼育数であり、野生での生息数や生息環境も含め、多角度から見ないと危険な考えになります。そもそもペンギン全18種を含め、野生動物のほとんどが今は将来が危ぶまれているという認識です。まだまだ言い足りませんが、このへん、語ると熱くなります(笑)

本題は、ジェンツーの産卵という出来事に会える確立、といったらいいのでしょうか。

というわけで、2008年の繁殖データです。

フンボルトの繁殖は、なんと45園館で202羽のヒナが誕生しています。すごっ!アクアス、3羽で喜んじゃいました(汗) なおこれは孵化までいたったデータです。無精卵や中止卵は含まれません。またフンボルトペンギンは現在繁殖制限を行っている園館が多く(卵を産んでも偽物の卵にすり替えて、個体数の管理や血統の管理をしたりします)、産卵数だけだったらこの何倍もの数になると思います。

ジェンツーはというと、2008年に生まれたのは7園館、37羽のみ。日本でジェンツーのヒナや、子育てを見ようと思っても、なかなか見れない数字になってきました。さらに亜種別でみると、

キタジェンツーペンギン  3園館 17羽

ミナミジェンツーペンギン 2園館 17羽

亜種不明ジェンツー   2園館  3羽

おお~。2008年の日本国内では、どの亜種も2,3つの動物園水族館でしか、「ジェンツーが生まれました!」とお知らせできなかったんですね。この少なさに出会う確立こそが希少価値。

 

そういうわけで←強引なまとめに入りました

ジェンツーの繁殖はかなり貴重な出来事でありまして、滅多に出会えないものであるのです。だからこそ、アクアスペンギンチームは今回のジェンツーの産卵でプチパニックなわけです(何のまとめだ) いや、ミナミジェンツーペンギンの数少ない繁殖成功施設に仲間入りできるよう、これからもペンギンたちに快適にすごしてもらうために日々努力をしていきたいと思います。

というわけで、現在卵を温めているジェンツーの姿自体が大変貴重ですので、ぜひ見に来てくださいね! そして、マスコミの皆様。もしジェンツーの卵が孵化した場合には、大々的に取り上げてやってください(笑)