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シロイルカ

ナスチャの出産記録 その二

2011.07.12 - シロイルカ

梅雨も明け、夏本番。毎日、暑いですね~。

本当なら、この暑さを通り越して、残暑というころ生まれるはずだったナスチャの赤ちゃん。

うまくはいかなかったけど、わたしたちスタッフの心に深く刻まれる事例になりました。

悲しい結果でも、やはりこのブログに綴ります。。。

先週に書いたナスチャ出産記録は、破水したところまででしたよね。

(おさらいをしたい方は、「コチラ」 ⇐ をクリックしてください。)

2011年6月30日、午前1時57分、ナスチャ破水。

出産対応スタッフが出そろった中、破水から約3時間後、つるっと出てきました、小さな赤ちゃんの尾鰭が。 

アーリャやアンナのときと比べると、本当に半分くらいの大きさしかないように見え、厚みもなくペラペラで、頼りない尾鰭に見えて仕方ありませんでした。 

3ヶ月近く早い出産でしたし、こんな未熟な状態で産み出されても、生きていけるのかどうか…スタッフみんな心配しながら、祈りながら見守りました。

それでも、出産は順調に進み、未明には赤ちゃんの下半身が姿を現しました。(その時点でメスと確認できました。)

その下半身は、最初は、ピクピクと水流に多少の抵抗をするようにしか動いていませんでしたが、徐々に動きが大きくなり、やがて娩出されるのが待ちきれないように激しく動くようになりました。

そして、もうほどなく出産というそのとき、、、悲しいトラブルが起こりました。

娩出された後(もしくは娩出と同時)に切れるはずのへその緒(臍帯)が、出産の途中で、まだ切れてはいけないときに千切れてしまった「ようなのです」。

「ようなのです」というのは、アクリルガラス越しに観察していたスタッフは多数いましたが、その切れた瞬間を確認したわけではなく、ナスチャがいきんで、臍より上まで赤ちゃんが見えたとき、そこにあるはずの臍帯がないことに気付いたのです。

まだ、誕生しておらず、空気を吸える状態にない赤ちゃんですから、体に必要な酸素は、臍帯を通じてナスチャ母さんからもらわなくてはいけないのです。それなのに、、、

「えっっっ…なんで…」

ガラス前のスタッフから、笑みが消えました。

すぐに緊急時に使うはずになっていたマイクで全員に一括連絡を入れました。

「臍帯が切れています。まだ、出そうで出ません。仔どもの動きは、しっかりしています。」

胸鰭の付け根近くまで出たまま、進むことも戻ることもできないのか、そこでのたうちまわるように動くだけの赤ちゃん。

臍帯が巻いてしまっているのか、胸鰭がひっかかってしまったのか、、、とにかく、赤ちゃんに残された時間は、もうわずかです。

ナスチャも、時折、りきんでいるようですが、やはり出ません。

1分、2分、3分、、、息の詰まる時間だけが経過していきました。

とうとう、赤ちゃんは、自力で出てくることができませんでした。

そして、わたしたちには、もう、プールの水を抜いて、出産の介助を行うという最後の手段しか残されていませんでした。

スタッフ総出で、ナスチャを押さえて、

 

赤ちゃんを引っ張り出したときには、もう遅すぎました。

 

ナスチャの赤ちゃんは、すでに息絶えていました。

ナスチャの処置が終わった後、観察をしながら、思いました。

早すぎる出産ではあったけれど、赤ちゃんに一度はプールを泳がせてやりたかったなぁと。

ナスチャも初めてのお産ながら、ミルクがあふれるほど出て、育てる準備は万端の様子でした。

数時間後に出た後産を赤ちゃんだと思ったのか、ナスチャは必死に背中に乗せて泳いでいました。

その姿を見ていたら、ナスチャもずいぶん待ち望んでいたんだなと思えてなりませんでした。

12ヶ月半、お腹の中で育まれた命は、願いかなわず、2011年6月30日に空へと旅立ちました。

わたしたちも、また、ここから、新たな気持ちで出発するつもりです。

いつか、シロイルカの仲良し母仔が見られるように。